【書評】アーモンド

とら子の日常

こんにちは!

勢い余って初めての書評を書いてみた、とら子です🐯

最近は経済や自己啓発、心理学などの本しか読んでおらず、今回もそれらの本を探すべく書店に行きました。

そこで今回題材にしている「アーモンド」という題名、表紙に一目惚れをし、即購入。

こんなに読みたい!と惹かれた本は久しぶりでした。

こんな方に読んでほしい

・自分は孤独だ
・人との接し方がわからない
・SNS上や自分の生活圏内で起きている誹謗中傷等は自分とは関係ないからしても問題ないと思っている、もしくは傍観している

では早速・・・※初めての書評ということと、個人的感想だということを念頭に温かい目でご覧になってください。ご意見、ご感想、ご指摘はとても喜びます。勉強させていただきます。

アーモンド
ソン・ウォンピョン著   矢島暁子訳

本の概要

脳にあるアーモンドと呼ばれる扁桃体(感情の中枢)が生まれ持って人より小さく、感情がわからない少年の話。


目の前で女の子が転んでも、ただ立って見ているだけだったり、目の前で家族が殺されても表情一つ変えなかったり、悲しい、楽しい、怒るなどの表現が難しい。
これは、見ているだけだったのではなく、その時にどうすればいいのかがわからないためだ。
家族が殺されても、頭の中で考えていたことは、「こんなことが起こらなかったら、次はどこに向かっていただろうか」「犯人はどうしてこんなことをしたのだろうか」「物を破壊するのではなく、なぜ人を殺したのか」など、
目の前の光景にショックを受けるでもなく、憔悴するでもなく、ただひたすらに理論的な疑問だった。
このように、普通ならば(と表現することは的確ではないが)女の子が転んでいたら「大丈夫?」と声をかける、目の前で家族が殺されたら(おそらく私なら)焦燥感にかられ、その場で唖然とし身動きが取れず、思考も停止するといったことができない。


そんな彼が、二人の人間との出会いを通して”感情”というものを芽生えさせていく、非常に感動深い、そして非常に人間味の溢れる作品である。

この本を読んだ私の思い

感情のあるなしが”情”のあるなしと連動するとは限らないということ。


感情をしっかりと持ち合わせている人間であろうとも人を傷つけ、罵倒し、モノとして扱うことがある。
感情を持たない人間も、わからないが故に傷つけることや扱いがひどい場合もあるだろう。しかし罵倒すること、批難することはない。
感情がないのだから、あの人はおかしい、あいつはばかだなどを感じないからだ。


また、感情を持たない人間は人を褒めたり、相手の気持ちになって悲しんだりすることがとても難しい。今どう反応するのが的確か、幼い頃から指導を受けなければならないほどに。
しかしこれもまた、感情を持ち合わせている人間でもできないこともある。


つまりは、感情のあるなしだけで「人の心がわかる人間」と決めつけてはいけないと私はそう思う。
むしろ、感情を持ってして、褒めることもせず、悲しまず、相手を傷つけたり、罵倒したり、している人間の方がよほど怖いと感じてしまう。


現代において、SNS上で繰り広げられる他者批判、最後まで追い詰める誹謗中傷、それらを傍観する無関心。
SNS上に限らず、企業内や学校内でもこのようなことが平気で起きている。
本書の少年のように扁桃体が人より小さい人の集まりかというとそうではない。
ほとんどの人が感情を持っており、感じることもできる状態でそのようなことをやっている。
本書の中にもあった言葉だが、「あまりにも遠くにある不幸は自分の不幸ではない」と思っているのでしょう。自分の生活圏内でなければ架空のこと、現実世界ではないという逃避ができてしまう


しかし、

それがもし自分の身の回りのことだったら?家族が、友人が、自分がその状況下にあると想像したら?


こうなると話は変わってくるのでしょう。それなのになぜ他者に向けた”情”を持つことができないのか、少しでも気持ちを考えることができないのか。
”普通”に感情を持っているのであれば、なおさら相手のことを考えるという行為をもっとしっかりと働かせるべきだと思う。
また自分とは違う人間を、異常とするのではなく、本書のように正面から受け止め、会話をし、理解した上で付き合っていくことがとても重要なことだ。
感情がない、何を考えているかわからない、ちょっと不思議なところがある、自分の価値観と違う価値観を持つ人などを異常だ、別次元の人間だと決め付けるには、ピースが欠けているように思う。
客観的に見て正反対の二人でも正面から向き合い、ぶつかることでお互いを理解し、良き理解者、友となり得るんだということを本書は教えてくれる。

最後に・・・

生まれ持って感情を感じることができるということだけでも奇跡なのではないかと考えた。


世界にはこうした私が当たり前だと思っていることが当たり前ではない人たちがきっとたくさんいる。
そんな彼らは私よりたくさんのことに気づき、考えているのではないかと思う。

感情を持つ私たちは、もっと他人を思いやるということ、気持ちを考えるということをするべきだ。


そして自分の中にある感情ももっと大切にし、時には放出し、時にはコントロールすることが必要だ。


この本から私は、人との関わり方、自分との向き合い方について考えるきっかけをもらった

・自分は孤独だ
・人との接し方がわからない
・SNS上や自分の生活圏内で起きている誹謗中傷等は自分とは関係ないからしても問題ないと思っている、もしくは傍観している

という人には特に読んでほしい。

もちろん、そうでない人ももちろん読むに値する作品だ。


久しぶりに読後の感情が温かい作品だった。

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